『犯罪心理学者は見た 危ない子育て』

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おすすめポイント1

世に「こうすれば子育てがうまくいく」という本はたくさんある。それももちろんとっても参考になると思うけれど「正解」を知るとその通りにしたくなってしまうというリスクがある。

時代が違えば、育つ環境が違えば、親の性格が違えば、そしてもちろん子どもの性格が違えば、「良いやり方」がひとつしかないとは考えにくい。なのに、その1つを信じて押し付けてしまうと暴力的な子育てになってしまうことがあると思う。

一方で「失敗」について学ぶことは役に立つだろう。なぜなら、それは盲信すべき正しさではなく、「自分もやっていないか?」という疑いを自分に向けることができるからだ。そのような点において、本書は役に立つ。ちなみに岡本『反省させると犯罪者になります』も類書と言えそうだ。

筆者は8. 「私がなぜ子育ての本を書くのか。あえて言葉を選ばずに言うなら、「子育ての失敗事例」を多く見てきたわけです。(…)非行・犯罪の事例を、子育ての学びに変えていくのが本書の趣旨です。」と述べ、加えて

31. 「何らかの仮説にもとづく子育て方針を持つことは大事です。(…)そして、間違いに気づいたら修正をおそれないことが重要です。(…)絶対的な正解はないのですから、その繰り返ししかありません。修正する際に大切なのは、子どもにもきちんと伝えることです。」という。

「仮説を持つ」→「間違いに気づいたら修正する」→「修正することを伝える」というプロセスが大切だ。そしてだからこそ、

4. 「もし、「私たちはこんなに子どものためを思って頑張ってきたのに、うちの子はそれに応えず勝手に悪くなりました」という親がいたら、その非行少年の更生は険しい道となります。」

6. 「更生するためには本人の努力がもっとも大切ですが、保護者も変わっていかなければどうにもならないケースがあります。」

と、間違いを認めず変わろうとしない親がいると、子どもにとっても悪影響であることが示される。間違えることが悪いのではなく、それを認めて学び変わろうとしないことが問題だと言える。

PaToCaの言葉で言い換えるなら、「毒親とは、ケアの欠如した関わりをする親である。ケアの欠如した関わりとは、自他のニーズを知ろうとし、ケアしようとし、間違っていたら学び直すことをしない関わりのこと」だ。

おすすめポイント2

さて、筆者は親の養育態度を以下のように整理する。

1.過保護型

2.高圧型

3.甘やかし型

4.無関心型

の4つがあり、すべての親が当てはまる。各タイプが失敗なのではなく、いきすぎると「危ない子育て」になる、というふうに考える。

自分がどのタイプなのか(複数がミックスされるのが普通だ)を把握すること、その上でそれを全部なくそうとか全部間違っていると考えるのではなく、いきすぎないように気をつけようと言うことだ。

48. 過保護型では、問題解決能力が身につかず、自立心が育たず、「やってもらったこと」への感謝ができず「やってもらえないこと」への不満を持つようになり、他責的になる。背景には、「子どもが自分に依存しない未来」を恐れる、精神的に自立していない親がいる。

高圧型は、親のコンプレックスや劣等感が背景にあり、罰を与えて服従を要求することで、子どもは顔色を伺うようになり、セルフエスティームは低く、人の言いなりになるような関わりをするようになることも。

138. 甘やかし型では、自己中心的で共感性に乏しく、他人の目線で物事を見られず、何でも自分の言う通りになると考え、そうでないと人を責めたり乱暴になる。状況判断の能力に乏しく、空気が読めず、浮いてしまう。我慢や欲求の折り合いの付け方を学べず、欲求不満耐性が低い。

143. 甘やかし型と過保護型は似ているが、後者は支配であっても「子どもの将来を心配」はしている。前者は「子どもの要求に刹那的に応える」ばかりで、子どもの将来を考えてはいない。甘やかすのは「楽」である。

174.無関心型の親は、親自身の生活を中心にし、衣食住さえ保証していれば親の責務は果たしていると考え、子どもの話は面倒くさがって、「あとで」ではなく「ずっと」聞かない。子どもは愛情飢餓、被害感や疎外感を持ち、自分を大切に思えない。しつけが不十分で集団行動が苦手、対人トラブルも多い。更生が最も難しいのはこのタイプに育てられた非行少年だと言う。

おすすめポイント3

184. 「「虐待の連鎖」が起こりやすいことはよく知られています。自分がされてきた子育てを自分の子にもするのは、それ以外のやり方がわからないからです。また、親自身が癒やされていない、回復できていないのも大きいと思います。」

これは、さまざまな加害者に関する書籍で必ず述べられることだ。職場のハラスメントにせよ、子育てにせよ、モラハラやDVにせよ、加害者はそもそも他の関わり方をあまり知らないことも多い。ということは、傷ついてきた養育環境があることも不思議ではない。

だからこそ、筆者は最後に237.「防犯は、子育てに行き着くのではないか。子育てはいわば、「将来の犯罪者を生まないための防犯」です。」と述べる。加害の連鎖を終わらせるためには、加害者が学び変わっていく必要がある。

そして、加害者が学び変わるためには、その人もまた傷ついてきた人だと考え、責めるのではなく共に学び変わって行こうとできる関係性が大事なのだと思う。GADHAやPaToCaといった場は、そのためにある。

終わりに

書誌情報

 

「変わりたい」と願う毒親のためのコミュニティPaToCaの理論を学ぶにはこちらのページをご覧ください。